研究内容
物質の大きさがナノメートル程度になると、物理的、化学的性質が変化し、従来のバルク材料にない物性を発現するようになります。研究室では、新規機能材料への応用を目指して、ナノ粒子の作製プロセスや物性の解明の研究を行っています。ナノ粒子の生成は、真空装置を用いた気相合成プロセスを利用しています。気相合成プロセスでは、アルゴンガス等の希ガスを真空装置に導入しながら、原料の金属板に高電圧をかけると、希ガスがイオン化してプラズマを形成します。このプラズマ中のアルゴンイオンが、金属板に衝突し、金属原子をたたき出すことで金属蒸気ができます。この蒸気が比較的高い圧力の希ガス中で冷却され、ナノサイズのクラスターを形成します。ナノサイズになると、水と油のように普通は混ざらない元素同士が混ざり合って合金を形成したり、変わった結晶構造の粒子が生成したりします。このような非平衡物質を利用して新しい機能材料を開発すれば、これまで不可能だったことが可能となり、新しい未来を築くことができます。
今の燃料電池には白金触媒が使われていますが、白金を使用しない触媒を作ることができれば、希少元素の節約やエネルギー問題の解決への一助となるでしょう。この様に、ナノ粒子の物性解明と、新規機能材料の応用を目指して、ナノ領域における相分離に関する研究を実施しながら、白金レス燃料電池用触媒の探索を行っています。
また、磁性材料は電気エネルギーを磁気エネルギーに変換する素子として多方面で利用されています。本研究室では、次世代の電子デバイスとして注目されている磁性を持つ半導体「スピントロニクス材料」の研究や、携帯電話などGHz帯域の高周波で使用する高透磁率薄膜材料の開発、軟磁性ナノ粒子と硬磁性ナノ粒子を混合したナノコンポジット磁石の研究も行っています。
一方、金属は自動車や航空機などの輸送機器から一次電池、二次電池、燃料電池をはじめとしたエネルギーデバイスの材料として用いられています。その材料の特長を最大限に生かし、その能力を長期間発揮するためには、使用環境における材料の耐食性(電気化学特性)を詳細かつ正確に把握する必要があります。本研究室では、高耐食材料開発指針確立に向けた腐食科学に基づく金属材料の溶解機構解明や電気化学インピーダンス法による構造材料・エネルギーデバイスの環境劣化モニタリング法の開発に関する研究にも取り組んでいます。
さらに、モバイル機器に利用されているリチウムイオン電池などの電池素材開発や、発火事故の心配が無い固体電解質を用いた全固体電池を意識した研究も実施しています。
現在の主要研究テーマ
- ナノ領域における相分離の観察と白金レス燃料電池用触媒の探索
- スピントロニクス素子に用いる室温強磁性半導体の研究
- 軟磁性ナノ粒子と硬磁性ナノ粒子を混合したナノコンポジット磁石の研究
- 高耐食金属材料開発のための溶解機構解明
- 構造材料・エネルギーデバイスの環境劣化モニタリング法の開発
- 全固体リチウム二次電池の研究